僕自身、半世紀近くも食べてきたお米「岩船米」、まぁほんと飽きないお米。ほかほかの炊きたてご飯は、その高揚感と香りで有無を言わさず美味しいものだが、実は、僕は少し冷めてからの方が大好き。やさしく結んだ「おむすび」や器の中でお味が渾然一体となる「お茶漬け」、どれも冷めた岩船米が持つ実力を遺憾なく発揮させてくれるお料理の数々だ。冷めたご飯にひと塩した柳かれいや鮭の塩引きをほぐし、そこに叩いた梅干しを添わせ、そこに親の仇か!というくらい熱々の濃い目の村上茶をぶっかける。固化した岩船米の澱粉を解き、干物の皮下に潜む細微な脂をじわりと溶かし、梅干しの脳天突き抜ける酸味が味を締め、干物の焦げ目も息を吹き返したように狂おしく香り、もう何も余計なものが欲しなくなり、至上の逸品になる。
村上うんめもん大使
料理研究家
キムラマサアキさん